小説 【入れ替わり・恋人同士】⑦

-目次- ・19.女性用ショーツを履く男性 ・20.男の乳首 ・21.異性の体で外食 19.女性用ショーツを履く男性 浴室のドアを開けたとき、ふわりと冷えた空気が頬をなでた。 「……ふぅ、気持ちよかった♡……」 陽真の意識を持つ澪の身体は、湯上がりの火照りを胸元に残したまま、タオルで長い綺麗な髪をゴシゴシと拭いていた。 隣では、澪の意識を持った陽真の身体が、無言でタオルを胸に巻き、鏡の前で何かを確認するように立っていた。 「……それにしても、改めて思うけど……♡」 澪(精神は陽真)はふと、彼女の――いや、“元俺”の姿を横目で見て言った。 「俺の体、でかいな♡。肩幅とかさ、あと……その、ちんぽとか色々…♡」 「言わないで……知ってるから……」 陽真(精神は澪)の声は、聞き慣れた陽真の声よりずっと低くて、妙に響いた。 女として生きてきた中で、こんな太い声を発したことなんてなかったから、今でも言葉を発するたびに沈んだ気持ちになる。 着替えの用意は洗濯済みのものを脱衣所に並べてある。 澪の女性用パジャマ、陽真のジャージ、二人の下着類。 陽真(精神は澪)は何の疑いもなく、習慣のように女性用ショーツに手を伸ばして、それを脚に通す。 足を片方、もう片方……そして、腰まで引き上げたとき。 「お、おい!? ちょっと待て!」 澪(精神は陽真)の声が、びしっと空気を切った。 「え? ……なに?」 「……お前、それ。今、“俺の体”にパンティ履いてるぞ?」 「……あっ」 瞬間、陽真(精神は澪)の手がぴたりと止まる。 鏡に映るのは、陽真のがっしりした男性の腰骨と、明らかに布面積の足りてないピンク色のショーツ。 そのショーツを盛り上げる男性の陰茎…。 「……うそ、やだ……っ」 陽真(精神は澪)の顔が見る間に赤くなっていく。 「いや、いや、ちょっと待って、爆笑していい? なにそれ、めっちゃ変態っぽいんだけど! マッチョな男が女の子用のパンティ履いてんの!!」 「ち、ちがっ、ちがうの! 無意識なの! もう何十年もこうやって履いてきたから、手が勝手に……!」 「でも、今その体、俺だからね? あー、腹痛い……お前、自分の彼氏がこの格好してたらどう思う?」 「そ、それは……っ!」 ショーツの下からごつごつした太ももと、引き締まった下腹部が主張してくる。 布地の中に収まりきっていない“陰茎”の存在感がいやに生々しくて、陽真(精神は澪)は腰に手を当てたまま固まってしまった。 「やだっ……っ、わ、私、ほんとに、男の体になっちゃってるんだ……」 湯気の名残がまだ残る鏡の前で、陽真(精神は澪)は自分の胸元――いや、平らな胸板をそっと見下ろす。 ない。いつもあるはずの胸の膨らみが、そこにはなかった。 「……うう、なんか、すっごく変な感じ……。肌の感触も違うし、骨格も、全部……」 「おーい、女のパンティそのまま履いたまま凹むなよ♡」 「う、うるさい……っ、見ないでってば!」 慌てて陽真(精神は澪)はショーツを脱ぎ、タオルで陰茎を隠す。 けれど、あの違和感は隠しようがない。脚を動かすたびにぶらぶらと揺れる“陰茎”が、自分の一部だなんて――。 「……ねぇ、陽真」 「ん?」 「歩くと……あそこ、揺れるんだけど、これ……ずっと気になるの?」 「なれるよ♡」 「うぅ……ほんとに男の人って、こんな不便な体で生活してるの……」 「まあ、女の体の方がいろいろ大変そうだけどな。……たとえば、生理とか♡」 「……うるさいっ!」 陽真(精神は澪)がタオルを構え直すと、澪(精神は陽真)はまた肩をすくめて笑った。 そんな風にじゃれ合いながらも、二人はゆっくりと、入れ替わった身体に“慣れて”いく。 「……はぁ……」 脱衣所の隅、鏡の前で陽真(精神は澪)はパンティを片手に、小さくため息をついた。 可愛らしいピンク色、いつもなら当たり前のように身につけていた自分の女性用の下着。 でも今、その布地の中にあるのは――男の体。ごつごつした脚、締まった腰、そして……ビキビキに勃起した陰茎。 「うぅ……私の体に戻りたい……」 陽真(精神は澪)は顔をしかめながら、そっとショーツを膝まで下ろした。 股の間からは、いまだ見慣れない“陰茎”が、無遠慮に存在感を主張してくる。 それを一瞬見下ろして、私はぐっと眉間にシワを寄せた。 「なんで……なんで私が、男にならなきゃいけないのよ……っ」 タオルでそっと腰を拭いてから、渋々陽真のボクサーパンツを手に取る。 陽真のもの――無地のグレー、タグの擦れた、いかにも“男の下着”。 「……せめて、もうちょっと綺麗なの履いてよね、ほんとに……最低っ」 不満を口にしながら、それでも脚を通していく。 布地が肌を覆っていくたび、明確に自分の“女じゃなさ”を実感させられて、胸の奥に重いものが沈んでいく。 「……ブラ、つけなくていいのも……なんか、逆に恥ずかしい…」 陽真(精神は澪)は鏡に映る自分の胸元――ぺたんこの大胸筋を見つめながら、肩を落とした。 あんなに気にしてたはずの下着のストラップが、今はなくて、それでも妙に背中が落ち着かない。 横から、くすくすと笑い声が聞こえた。 「ねぇ、澪……それ、脱いだやつ。もらっていい?♡」 「え……?」 陽真(精神は澪)が振り向くと、そこにはタオル一枚を腰に巻いた澪(精神は陽真)が、にやにやしながら立っていた。 その目は、まるで宝物でも見つけたように、陽真(精神は澪)の手元のショーツに釘付けだった。 「……それ、今は俺の、だよな?♡。ていうか、俺は今、島村澪なんだから、ある意味では“俺の”でもあるし……履いていい?♡」 「は……!? ダメに決まってるでしょ!?」 陽真(精神は澪)は慌てて背中にショーツを隠したが、澪(精神は陽真)は一歩近づいてくる。 「えー、なんで?♡。今、俺、澪の体なんだし、男のパンツより絶対しっくりくるって♡」 「そ、それでも! 私の下着を、私の体であんたに履かれるの、めちゃくちゃ恥ずかしいの! やめて!!」 「……でもさ♡」 澪(精神は陽真)は、にやっと笑って、声をひそめる。 「実は……ちょっと先っぽ濡れてるよね? このパンティ♡さっきの……勃起してた我慢汁で…♡」 「~~っ!!! 言わないで!! ほんとそれだけは言わないでぇぇぇ!!」 陽真(精神は澪)は全力で両手で口をふさごうとしたが、澪(精神は陽真)は器用に身体をひねって、するりとショーツを受け取る。 「うわ、ちょっと湿ってる♡……でも、なんか体温残ってる♡……男の人が履いた、アタシの、パンティ♡……」 「……ほんとに履くの? 本気で言ってるの……?」 「うん。アタシ女の子だもん♡男の人の下着なんて履きたくないもん♡」 そう言って、澪(精神は陽真)はタオルを外し、恥じらいもなく澪の裸体をさらけ出した。 柔らかそうな胸、引き締まったウエスト、そしてふんわりとした太もも。 目の前に映る“澪の体”が、体の持ち主の澪ではない男性の動きでパンティを履こうとしている。 その事実に、陽真(精神は澪)は背中にぞわっと寒気のような感情を覚えた。 「ブラジャーも……貸して♡」 「え?…………」 陽真(精神は澪)は深くため息をついて、自分で準備していたショーツとセットのピンク色のブラジャーを差し出した。 「大事に扱ってよ。汚したら絶対許さないからね」 「はいはい、わかってるって♡……うわ、ホック、むずっ。これ、背中で止めるの大変じゃね?♡」 「そうやって、女の苦労を思い知ればいいのよ…」 20.男の乳首 脱衣所から出た陽真(精神は澪)は、屈辱感を感じながらも、陽真のシャツを着て、その上から陽真ジャージを羽織ってソファに腰を下ろした。 まだ慣れない男の体に、ジャージのウエストが妙にきつく感じる。 肩や背中が広くて、何気ない動作もどこかぎこちない。 けれど、そんな中でひときわ気になるのは―― 「……なんか、変な感じ……」 私はそっと、Tシャツの上から胸元を押さえた。 ない。 いつもなら、柔らかく揺れるものがある場所に、いまはただの平坦な筋肉があるだけ。 代わりに、Tシャツの中でぴたりと張りついた乳首が、布に擦れて妙に意識に触れてくる。 「……やっぱり、ブラしてないのって、落ち着かないわね……」 自分でもわかるほど、声が小さくなっていた。 女性の頃の癖で、つい胸元を気にしてしまう。だが、今その“胸”は、まったく別の感触を持っていた。 そんな陽真(精神は澪)の様子を、ソファの反対側でタオルドライしていた澪(精神は陽真)がちらりと見てきた。 「……なんか、そわそわしてんな。気になるのか?♡」 「べ、別にっ……ちょっと違和感あるだけ……」 「へぇ……♡」 にやっと笑った澪(精神は陽真)は、突然ソファから身を乗り出してきた。 「なぁ、男の体でも乳首って感じるんだぜ?♡」 「……え?」 その言葉に、私はびくっと身体をこわばらせた。 次の瞬間。 「……ちょっ……!?」 Tシャツの裾がめくられたと思ったと同時に、男の胸の先端――乳首に、ひんやりとねっとりした感触が走った。 「な、なに……なにしてっ――」 「男の体でもこうすると……♡ペロッ…♡」 澪の姿をした陽真の舌が、ぺろりと陽真(精神は澪)の胸の先の乳首をなぞった。 「っ――!」 舌先がちろりと触れた一瞬だけで、全身にゾクリとした感覚が走った。 それは明確に“快”とは違う、けれど“嫌”でもない。 強いて言えば――“知らない刺激”だった。 「やっ……めてってば……っ!!」 「……うふっ♡気持ちいいだろ♡」 澪(精神は陽真)のいたずらっぽい笑みが、澪の顔で向けられる。 「……気持ちよくなんか、ない!……」 「ふーん? でも、声がちょっと、震えてたよ?♡」 「ち、ちが……!」 陽真(精神は澪)は慌ててTシャツを押さえ、身をよじる。 でも、ほんの一瞬、確かに―― (なんか……変なゾワゾワが来た……あれが、男の体の“感じる”ってやつなの……?) 「男の体も気持ちいいだろ…?♡」 澪(精神は陽真)がまた、にやっと笑った。 「今の澪、俺の体に入ってるけど……男の体って、案外、乳首も“性感帯”なんだぜ?♡」 「うぅ……っ、最低っ……」 「ちなみに、ちんぽの先っぽも舐められると気持ちいいんだぜ?♡」 「なっ……!! ば、ばか!! そんなことしたら許さないからっ!」 陽真(精神は澪)は真っ赤な顔で近くのクッションを引き寄せ、顔を隠した。 しかしその心の奥では―― 今まで知らなかった感覚と、これから一週間を男の身体で過ごす不安とで、少しだけ胸がドキドキしていた。 「ねぇ、あ・な・た♡」 「……やめて、その声。ほんとにムリだから」 向かいのソファで脚を揃えてちょこんと座っているのは、澪の姿をした陽真。 だがその表情には、いつものクールさは微塵もなく――。 「ねぇ〜、“アタシの乳首も舐めて♡”」 「絶対やだ…」 「俺も澪の乳首舐めてあげたんだから、俺のも舐めてくれよ…♡」 そう言いながら、澪(精神は陽真)は、おもむろにパジャマの裾をつまみ、ぐいっと引き上げた。 「ねぇ…見て♡、ブラずらしたら、ちょっとだけおっぱい見えるでしょ〜ん♡……いやん…エッチ♡」 「はぁ!?、エッチなのはあんだでしょっ!?」 「女の子に言われるとドキドキするでしょ~ん?♡」 陽真(精神は澪)もう、屈辱感で顔が熱くなりすぎて火を吹きそうだった。 「や、やめて! あんた男でしょ!?」 「えー、でもさあ……こっち、すごいの♡なんか、さっきからブラジャーに胸先がこすれるだけでゾクッとする♡“女の体を研究”させてくれよ…♡」 「なんの研究よ!? あんた、ほんとに最低よっ!?」 「ふふっ、顔真っ赤~。アタシのエッにな体に興奮してる?♡」 「してない!! それ、私の体だから!! もうやめてほんとに!!」 「はるまくんったら…つれないわねぇ~♡。もしかして、アタシの胸には興味ないのぉ〜ん?♡」 「自分の胸に興味ある女なんか、いないでしょ!!」 「ねぇ〜、ねぇ〜、ちょっとだけでいいからぁ♡」 「……うるさい」 ソファの上、陽真(精神は澪)はついに観念しかけていた。 自分の顔をした“陽真”が、にやにやしながらTシャツをたくしあげ、ブラジャーを指先でずらしている。 「見て〜ん♡、乳首、ちょっと出てるよ〜。アタシの乳首、男の子に見られてる〜♡」 「私の顔で言うなっつってんの……」 陽真の体に入っている澪は、もはや抵抗の気力をなくしつつあった。 というより、ここまでくるともう変なリアリティがある。 自分の顔、自分の声で、そんなセリフを吐かれて、他人の手で“自分の胸”を見せられる異常事態に、怒るよりも呆れてしまう。 「ちょ、ちょっとだけよ…?」 「うふっ、やった♡」 澪(精神は陽真)は、まるで猫がまたたびをもらったときのように喜ぶと、ソファにゴロンと寝転んだ。 Tシャツとブラをずらして、まるで「さあどうぞ♡」みたいに胸を突き出してくる。 「え……ここで? ソファの上で……?」 「いいじゃん。だってベッドは寝るとこだし。ソファだとエッチじゃないでしょ?♡」 「……なによその理屈…」 陽真(精神は澪)は大きなため息をついてから、渋々しゃがみ込んだ。 自分の姿なのに、もう他人のようで、でも妙に生々しい。 少しだけ、ほんの少しだけ――と、陽真(精神は澪)は元の自分の体の胸元に顔を近づけた。 「……じゃあ、ホントにちょっとだけだからね…」 「は〜い♡」 ぺろ――。 「いやんっ!!♡……」 澪(精神は陽真)の身体がびくっと小さく跳ねた。 「ちょ……あっ、なにこれ……っ、やば……っ♡」 「……え、そんなに?」 「これ、なんか、やばい……♡。ちょっと舐められただけで、ゾワッて……♡女の乳首気持ち良すぎだろ…♡」 陽真(精神は澪)は気まずそうに顔をそらした。 確かに、舌をちょっと当てただけだ。けれど、陽真の反応は明らかに“ガチ”。 「ちょっ……やば♡、さっきみたいに……もう一回……もうちょいだけ……舐めて♡」 「やめてよ! 私の声で変なこと言わないでっ!! てかあんた男なのよ!?」 「えっ、でもでも、これ、自分じゃ届かないから……澪、あともう少しぺろっと――♡」 「……もうやだ…」 陽真(精神は澪)はソファの上で身悶えるように寝転がる“元の自分の姿”が、あまりにシュールすぎて、もはやツッコミのしようがなかった。 「……これがあと一週間続くとか、地獄じゃない?」 「天国じゃなくて?♡」 「地獄一択よ!!」 陽真(精神は澪)は両手で顔を覆った。 その向こうでは、**自分の胸を押さえながら、したり顔で笑ってる“私”**がいた。 ソファの上で、澪(精神は陽真)がまたしてもあの恥ずかしいリクエストをしてきた。 「ねぇ、もっと、もっと……その……舐めてくれよ……♡」 「もうっ! 何回言うのよ!?」 陽真(精神は澪)は顔を真っ赤にしながらも、渋々と覚悟を決めて、またそっと唇を元の自分の体の胸の先端に近づけた。 何度も味わったはずの感触なのに、なんだかまだ慣れない自分がいた。 ぺろりと舐めると、澪(精神は陽真)は思わず小さな声を漏らした。 「はっ……く、くそ……なんだこれ……本当に気持ち良すぎる……!♡」 澪(精神は陽真)のリアクションに、陽真(精神は澪)は屈辱感を感じたけれど、ぐっとこらえて、もう一度そっと舌を這わせる。 「……なにこれ、女の体、敏感すぎる!♡」 「もういいでしょ?……」 二人の間に照れ臭くも不思議な空気が流れた。 お互いの身体で感じる新しい感覚に戸惑いながらも、陽真(精神は澪)はどこか距離が遠くなった気がしていた。 21.異性の体で外食 風呂あがりの肌に、ひんやりとした室温が心地よく感じる。 時刻はまだ午後五時半過ぎ。カーテンの隙間から差し込むオレンジ色の光が、部屋の空気を柔らかく照らしていた。 二人はリビングのソファに並んで座り込んでいた。 ジャージ姿のまま、陽真(精神は澪)ふと冷蔵庫の中身を思い出しながら口を開いた。 「……とりあえず、夜ご飯はどうしよっか? なんか適当に、冷蔵庫にあるもので炒めよっか?卵とウィンナーと、それと冷凍してた野菜とかでいい……?」 それを聞いた澪(精神は陽真)は、鏡の前で自分の髪をドライヤーで乾かしながら、小さく唸った。 「ご飯、外行かない?♡」 「外で食べるの…? え、この体で行くの…?」 陽真(精神は澪)は思わず振り返って、“自分の顔”をしたその姿を見つめる。 澪(精神は陽真)は、髪をふんわり整えながら、鏡越しに私を見てにやりと笑った。 「だってさー、せっかく入れ替わったんだし。外出とかしてみたくね?♡ 俺、澪の身体で歩いてみたいんだよね~♡」 「は?」 ぽかんと口を開ける私に、澪(精神は陽真)はまるで新しいおもちゃをもらった子供のようなテンションで続ける。 「さっき風呂入ってて思ったんだけどさ、この身体、めっちゃ軽いし柔らかいし、歩くだけでも揺れるんだぜ?♡ これ、外で試してみたくない?♡」 「試す……って、なにを?」 「だから、女子の視点で世界を見るってやつ。ほら、男のときって、電車で痴漢のニュース見てもピンと来なかったけど、今ならなんか……実感湧きそうっていうか♡」 「なにその物騒な好奇心」 陽真(精神は澪)は完全に呆れるような気持ちであった。 自分の身体が他人に動かされている不安もあった。 「……ってか、あんた、私の身体で外出たいって、バレたらどうすんのよ」 「バレないように、ちゃんと“澪”になりきるもん♡。歩き方も、姿勢も、気をつけるし。……それにさ♡」 「それに?」 澪(精神は陽真)はふいに真面目な顔をして、言った。 「せっかくだから、今のこの“状態”を、一つの思い出にしたくて」 陽真(精神は澪)はちょっとだけ、心が動いた。 (思い出か……そうか、そういうふうにも考えられるのか) 冷蔵庫に残ってる材料は確かに心もとないし、何より、澪(精神は陽真)がこうやって前向きにふざけてくれるから、陽真(精神は澪)も少しだけ、この奇妙な状況を笑っていられる気がする。 「……じゃあ、変な服着なければいいよ」 「うふっ♡ じゃあ着替えてくるわね〜ん♡! アタシの洋服タンスはどこ?♡」 「やっぱ外食やめる……?」 「もう言った♡ 行くって決めた♡」 私はがっくりと肩を落とした。 自分の服を、自分じゃない人間に選ばれるこの感覚……なんとも言えない居心地の悪さ。 -続く-



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