小説 【入れ替わり・恋人同士】②

-目次- ・4.一週間は元の体に戻れない ・5.ミニスカートでパンチラ ・6.彼女の体でショッピング 4.一週間は元の体に戻れない 「え、ちょっと待って……一日って話だったでしょ……? 聞いてない……!」 「申し訳ありません。トラブルは事前に予測できない部分がございまして……ただ、医学的・法的には機械故障の場合の肉体交換延長は認められております」 「いやいやいや……そんな……」 陽真(精神は澪)は困惑しながら、頭を抱えるようにして立ち尽くした。 その大きな手が、明らかに「自分のものじゃない」とわかるから余計に混乱する。 一方―― 「えっ、マジ? 一週間? それって、ずっと女の生活ができるってことだよね……!?♡」 澪の身体に入った陽真は、素で嬉しそうだった。 「わー、マジか……! 服とか買いに行ってもいいのかな? 化粧もしてみたいし、下着も……あ、エッチなのも着てみたいな…♡」 「ちょ、陽真……テンション上がりすぎ……」 「だってさ、澪の体、すっごい楽しいんだもん! 歩くだけで太ももが擦れてむずむずするし、ちょっと座るだけで柔らかいってわかるし……あと下着の締め付けが……なんかクセになるっていうか……ふふっ♡」 澪(精神は陽真)はうっとりした顔で、指先で太ももをつーっと撫でながら、自分の胸を少しだけ寄せてみたりした。 その様子を見た陽真(精神は澪)は、顔を真っ赤にして、口を開けかけて、言葉に詰まった。 「もう……いいってば、そういうの……ほんと、ちゃんと……普通にしてて……」 「ん〜♡ “普通”がもうわかんないよ〜」 わざと女の子口調で返されて、思わず顔を覆う。 (……ほんとに、あと一週間もこのままなの?) 陽真(精神は澪)は心の中で、長いため息をついた。 そして静かに、こう呟いた。 「……しょうがない、か。やるしかないんだもんね」 5. ミニスカートでパンチラ 「……じゃあ、今夜は一旦、予約されてるホテルに一度戻っていただいて。 お互いの体調と生活習慣に慣れていく期間として、しばらく日常生活に戻ってください」 医師がそう伝えると、 澪(精神は陽真)と陽真(精神は澪)は顔を見合わせた。 「……一週間、かぁ……」 「……うん。やるしかないね♡」 ほんの冗談みたいに始まった“肉体交換生活”が、現実のものになった瞬間だった。 まだ身体も、喋る声も、歩く足元もままならないのに、あと一週間は“元の体に戻れない”。 その後二人は患者衣や、病院から貸与されていた下着類を返却した。お互いが元の体の時に来ていた衣服を交換して、現在の肉体に合わせて着用した。澪(精神は陽真)は初めて着る、女性用のミニスカートや、彼女の下着をつけることに興奮気味であった。 ⸻ ◆ 病院を出る頃には、お昼を少しすぎていた。 建物の前で、澪(精神は陽真)は大きく深呼吸をした。 薄いノースリーブのキャミソールが風に揺れ、肩が涼しげに見える。 下はミニスカート。黒のプリーツで、膝上10センチは軽く超えていた。 風が吹くたびに、ふわっと裾が持ち上がる。 「……うわ、これ……すごいね……風が直接くる……♡」 澪(精神は陽真)はスカートの裾を片手で押さえながら、嬉しそうに笑っていた。 「ちょっと、そんなにニヤニヤしないでよ……恥ずかしいから……」 陽真(精神は澪)は、身長170センチの男の身体で、だぶっとしたTシャツと短パンを着ていた。 まさか自分の服が、女の体をこうもエロく見せてしまうとは……と思いながら、 目のやり場に困っていた。 澪(精神は陽真)はというと、完全にその気を楽しんでいた。 「いやだって、これさ、ミニスカってこんなに開放感あるんだね。歩くだけで太ももに風があたるし、パンツ見えそうになるのが……なんていうか……こう、ドキドキするというか……♡」 「はいはい、ちょっと落ち着いて……もう、あんまり言わないの」 「だって見て? ちょっと前かがみになると……♡」 澪(精神は陽真)はわざとらしく、しゃがみこむふりをした。 スカートの中がふわっとめくれ、水色の縞々パンツが一瞬だけ見えた。 「いやん…アタシのパンツ見えちゃった♡」 「……あのね!? そういうの、やめてって言ってるじゃん……!」 陽真(精神は澪)は思わず顔を赤らめ、澪(精神は陽真)の手首を引っぱった。 その顔は「自分の体」がそんな風に扱われることへの照れと、ほんの少しの苛立ちが入り混じっていた。 「……でも、やっぱりスカートって、えっちだね♡」 「もう……最悪…」 澪(精神は陽真)は、彼女の体で自分を見下ろしながら小さく笑った。 スカートの裾からのぞく素足と、揺れる胸元。 歩くたびに身体が小刻みに揺れて、重心の違いが“女”であることを教えてくる。 (これは……クセになるかもしれない……) 6.彼女の体でショッピング ホテルへ向かう途中、澪(精神は陽真)がふと足を止めた。 「ねえ、ショッピングセンター寄っていかない? ホテルのすぐ近くだし」 「え? 今から? まだお互いの体に慣れてないのに……」 「大丈夫だって。女の子の服、いろいろ見てみたいし……下着も、もうちょっと種類ある方が楽しそうじゃない?♡」 「……そっち“楽しむ気”しかないでしょ」 「だって、一週間もこの体で暮らすんだよ? せっかくだから、楽しまなきゃ損じゃん♡」 「……はぁ……」 陽真(精神は澪)は小さくため息をついた。 だけど、もう澪(精神は陽真)の足は動き出していた。 ミニスカートを揺らしながら、白い脚を軽やかに動かす。 太ももに風が通るたび、澪(精神は陽真)の目はきらきらと輝いていた。 (ほんとに、この人……) 陽真(精神は澪)は、すこし離れて歩きながら、自分の姿を眺めた。 “彼女の体”が、“彼”の性格で、スカートを楽しげに揺らしている。 どうしようもなく、妙で、そして……少しだけ恥ずかしさを感じる光景だった。 -都内のショッピングセンター- 休日の午後が少し過ぎる頃、人通りはかなり多い。 館内は涼しく、空調のやわらかい風がスカートの裾を揺らす。 澪(精神は陽真)が歩くたびに、黒のプリーツスカートがふわふわと揺れていた。 肩を出したノースリーブのキャミソールに、ストラップが覗くブラジャー。 彼は今、どう見ても「かわいい女の子」だった。 その隣を歩くのは、Tシャツと短パン姿の男性――陽真(精神は澪)だ。 中身が女性と気づく人は、誰もいない。 「……なあ、澪」 人混みを抜けて少し落ち着いたスペースで、澪(精神は陽真)が声を潜めた。 「ん? なに?」 「このまま歩いてるとさ、他の人から見たら“女の子と男の人がデートしてる”って感じに見えるわけじゃん?」 「まあ、そう見えるよね……」 「だったらさ、そろそろ口調も“体に合ったほう”で話した方がよくない? 周りから見たとき、違和感ないように♡」 陽真(精神は澪)は立ち止まり、少し考え込んだ。 確かに、今のままでは“女の子の声で男の口調”と“男の声で女の口調”という、かなりズレた状態になっている。 「たしかに……その方が自然かも……」 「じゃあさ、俺は女の子口調で話すね♪」 澪(精神は陽真)は、すぐににっこり笑って、少し高めの声を意識しながら口を開いた。 「ねえねえ、はるまくんも、男の子っぽく喋ってみてよ〜♡」 「えっ……!?」 陽真(精神は澪)は面食らったような顔をした。 その顔は男らしい骨格なのに、目元が赤く染まっていく。 「ちょ、ちょっと待って、それは……恥ずかしいって……」 「なんで〜? 今その体は男なんだから、“オレ”とか“だろ”とか使ってみて?」 「え……オ、オレ……は……い、いや、ムリムリ!ムリだからっ」 両手で顔を覆いながら、陽真(精神は澪)は身をよじる。 その様子が、見た目は完全にがっしりとした男だから、まるでコントみたいだった。 「もう……普通に話してよぉ……お願い……」 「やーだ♪ 女の子の声でさ、こうやってしゃべると、優越感を感じるんだよね〜♡」 澪(精神は陽真)はくるっと小さくターンして、スカートの裾を翻した。 ストラップが肩からわずかにずれて、うなじがちらっと見える。 (うわ……なんか、自分で見ててもドキドキするな……) 「スカートって、動くたびに中が見えそうになるのが……たまんないね♡」 「ちょ……ほんとに、それ以上言うと怒るよ……」 陽真(精神は澪)は低い声で小さくつぶやいた。 耳まで赤い。たぶん、心底恥ずかしいのだ。 しかしお構いないし、澪(精神は陽真)はニコニコしながら歩き出した。 -続く-



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