筋肉ダメイド拡大記10「絃子の現在“値”」
「よい、っしょと」
僕は、物置替わりにしている両親の部屋へ行き。
嵩張るので一時的に保管していた、“衣類”を持って来た。
「うわぁ・・・凄いです!」
僕たち三人は、改めて居間に集合。
絃子は、自身の持ち物を芽衣子の部屋に置いて来て。
芽衣子は、テーブルや椅子を隅っこに避けた。
言わずもがな、片手で簡単に片してしまう。
テーブルみたいな大きな家具も、芽衣子にとっては箸を持つのと変わらない。
「でも、本当に良いんですか?」
「勿論。“これ”は、福利厚生の一環だよ」
目の前には、色んな所から搔き集めた衣類の数々。
“今の芽衣子”のサイズが幾分、規格外な事もあり。
芽衣子が当面は困らないよう、頑張って集めた。
「はは。ちょっと、買い過ぎた・・・かな?」
少し、頑張り過ぎた・・・かも知れない。
僕が外出して、『吊るし』で買って来た物。
両親が気を利かせて、大量に送ってくれた海外製。
更に、通販で注文した諸々。
パッと見で何着あるのか、判別が付かない。
そのぐらい大量の服、服、服・・・。
「わぁ。ホントに、すごい」
絃子の来訪も、ウチの両親が呼んだからだった。
【神のプロテイン】によって、芽衣子が肥大化して。
着る服に困るようになった事は、両親に伝えた。
両親からすれば、絃子も同じ状況なのは想像に難くなかった訳で。
まさか、絃子にも【神のプロテイン】を提供しているとは思わなかったけど。
「わたしも、着る服なくて困ってたんだ」
芽衣子よりも身長が高い絃子は尚更、着る服に困っただろう。
高校生なら、着飾るようになっていてもおかしくないとはいえ。
ノースリーブを着ているのは、やはり体型によるところが大きい・・・筈。
身近に芽衣子という規格外が居ると、感覚が麻痺してしまうけど。
『102cm』という力瘤は普通に、大きい。というか、大き過ぎる。
「でも、本当に“それ”から行くの?」
「うん。だって、着替える度にどっか行くの、大変でしょ」
“それ”だけは、僕が持って来る訳には行かず。
芽衣子が保管していた物を、持って来て貰った。
ビキニ水着。
柄がない、単色のシンプルなタイプ。
だけど、原色なので色味自体は凄く派手。
「いや別に、僕は部屋に引っ込んでいて良いんだけど・・・」
「だーめ。お兄ちゃんが見てくれなきゃ、意味ないじゃない」
僕が見る事に、何の意味があるんだろうか・・・。
「芽衣子さんも、そう思うよね?」
「はい♪」
女子二人が、謎の意気投合をしていて。
僕だけが、事情を理解出来ずに疎外感を味わっている。
意図する所は別にして、状況としては。
居間は、これから更衣室替わりになる。
着替える度に下着姿になる、のはまあ当然なんだけど。
そうなると僕は、着替えの度に席を外さないといけなくなる。
だから、この場は女子二人に任せて、僕は自室に引き篭もり。
一人、ゆっくり読書でも楽しもうと思っていたのに。
「逆転の発想、だよ♪」
絃子はまるで、良い案を思い付いたと言わんばかり。
下着を着ているから、下着が見えてしまうのであって。
一番最初に水着姿になってしまえば、見えるのは水着。
着替える際に見えるのが下着ではなく、水着になる。
イコール、僕が傍に居ても問題ない、という論法らしかった。
「お兄ちゃん。じゃあ、水着になる間だけ廊下に居て」
「わ、わかった」
僕は、そそくさと居間を出て、扉を閉める。
「あ。これって、このまま・・・」
扉一枚とはいえ、隔たりが出来た。
その隙に逃げてしまえば・・・なんて、思うも。
「お兄ちゃん! 逃げたら、ダメだかんね」
絃子に、速攻で釘を差されてしまう。
シュル、シュルル。
バサッ、バササ・・・。
「・・・・・」
僕は、扉越しに衣擦れの音を聞かされる羽目に。
「もう、良いよー」
「ご主人様。どうぞ」
二人とも軽装だったからか、あっという間に着替え終わったみたいで。
僕は、直ぐに招き入れられた。
「お兄ちゃん。どう、かしら?」
絃子は、テレビで観た事でもあるのか。
見よう見まねで品を作って、ポーズを取っている。
「う、っふん♪」
絃子は、赤ビキニの上下に身を包み。
右手を頭の後ろ、左手を腰に当てている。
「・・・・・」
絃子としては『クイッ、クイッ』という効果音のつもり、なのかな。
上背があるとはいえ、まだ子供だからか。
異性を誘惑する動作は凄く、ぎこちない。
実際はモリッ、モリッという擬音と。
ギュ、ギュギュッという筋肉同士が擦れ合う異音が聞こえた。
右腕の力瘤が大きく盛り上がり過ぎて、右頬を圧迫しているし。
左腕の力瘤は大胸筋とぶつかり、変形『サイドチェスト』みたいになっている。
「す、凄い・・・ね」
「ぶー、ちょっとぉ。それ、どういう意味ぃ?」
赤ビキニな絃子がズイッ、と僕に一歩近付く。
僕の目の前でぶるんっ、と大きな乳房が揺れる。
「っ!?」
高過ぎる身長のせいもあってか、僕の目線の高さにビッグバストが位置している。
バレーボールが二つ、何とかビキニトップに収まっている感じ。
「大きい、よね?」
「そりゃあ、まあ・・・」
面と向かって、バストサイズについて問われる。
玄関で再会した時の印象としては、確かに“大きくなった”ように見えた。
「何か、カップサイズが小さくなっちゃったみたい」
「え、どういうこと?」
絃子に促され、付いたままになっている『タグ』を見てみる。
『50H』。
「あれ。確か、絃子ってブラのサイズは・・・」
「うん。今日も、『Jカップ』のブラを着けてるよ」
とてもじゃないけど、『Hカップ』にダウンしたようには見えない。
「・・・ん。ひょっとして、これって」
「何か、わかった?」
答えは、単純明快。
ビキニ水着は、ウチの両親が送って来た物だった。
それはつまり、海外製ってことで。
「これ。多分だけど、“インチ”表記だね」
「インチ・・・?」
今時の高校生には、ピンと来ないのかも知れない。
世界的には、『センチメートル法』が多いとは聞くけど。
未だに、頑なに『インチ』で単位計算する地域も残っている。
「それ、『125J』だね」
「えー、そうなの?」
今はスマホっていう便利機械があるので、直ぐに換算出来る。
「ってか、トップが『160cm』・・・」
「トップって、バストサイズのこと? そうだよ」
絃子は、自身のバストサイズ自体は把握していたようで。
しれっと、そう言い放った。
「小っさくなってなかったんだ。良かったぁ」
絃子は謎の安堵をして、自分で胸を揉んだ。
「・・・。やっぱり、揉んでみる?」
ずぶぅっ、と大きくなった絃子の手が沈んで行く。
「!? な、何を言って・・・」
「ふふっ。冗談だよ、ジョーダン」
絃子が、悪戯っぽく笑う。
美人顔で妖しく笑うと、妙な小悪魔っぽさがある。
「でも、芽衣子さんには勝てないんだよね」
「え、そうですか?」
事情を知らない芽衣子が、キョトンとしている。
芽衣子は、センチ換算で『145K』だった。
※正確なアンダーバストは『143cm』だけど、肌着としては『5cm』刻み。
「芽衣子さん、『Kカップ』だよね?」
「はい」
絃子のバストが、バレーボール(直径20cm)なら。
芽衣子は、ボウリング球(直径21cm)サイズ。
片乳あたり横幅で『1cm』違うのは、それなりの差だ。
こうやって並んでみると確かに、芽衣子の方が一回り大きく見える。
前の絃子:152(119J)※アンダー差:33cm
今の絃子:160(125J)※アンダー差:35cm
前はギリギリで、『Jカップ』に上がったばかり。
今はギリギリで、『Jカップ』に留まっている・・・感じか。
「どっちかというと、アンダーの方がショックだけど」
「そう、なの?」
女子で言う所の、アンダーバスト。
いわゆる下胸と呼ばれる部分で、大胸筋の下辺りの胸周りを指す。
男子の胸囲は大胸筋の真ん中辺りで測るので、厳密には違う数値だ。
超一流のボディビルダーだと、胸囲は有っても『140cm』台の後半ぐらいらしい。
「す、っご」
「きゃっ」
絃子が、芽衣子の脇から胸下辺りを揉んでいる。
「か、った・・・」
「絃子。それ、力入れてるの?」
さっきの腕相撲の結果は一先ず、置いておくとしても。
絃子の筋力は、芽衣子に匹敵するぐらいには凄まじい。
数年前の時点ですら、置時計を握り潰し。
ドアノブを引き千切った上に、ピンポン玉にまで圧縮してしまえる。
もし、そんな絃子の超握力で、胸を揉まれでもしたら。
僕なら、あっという間に肋骨を粉砕されて、ペシャンコに圧縮されてしまう。
「うん。目一杯」
「絃子さん。く、くすぐったい・・・です」
芽衣子が、絃子のスキンシップに身を捩っている。
この前、『2トン』近い車を持ち上げ・・・と思い浮かべ、一旦思考が止まった。
三桁キロを四捨五入するのは正直、感覚が麻痺している気がする。
正確な重量で、『1850kg』ものワンボックスカーを持ち上げたばかりだけど。
腕力だけでなく、発達した上半身の筋肉があってこそ、だろう。
「うーん、お腹は同じぐらいなのになぁ・・・」
キュッと縊れて見えるが、それはあくまで巨大な胸周りと比較しての事。
僕の胸板並みに太い腰には二人ともボコボコンッ、と盛り上がる六つの腹筋。
「・・・ん。あれ」
「どうしたの?」
「ひょっとして、わたしが勝ってるのって身長だけ・・・?」
「んー。そう、なの?」
正直なところ、絃子とは久し振りに会ったばかり。
身長とバストサイズ、後は力瘤ぐらいしか聞いていない。
「それなら、お兄ちゃんが測ってよ」
「・・・え。何で、僕が」
この場には今、芽衣子も居る訳で。
わざわざ、僕が採寸しなくとも、芽衣子がやれば済む。
「あー、芽衣子さんにやらせようとしてる。パワハラだー」
「え。いや、そんなつもりは・・・」
今のご時世、雇用者と被雇用者の関係は難しくなったとはいえ。
面倒臭い時代になってしまったものだ。
「ご主人様。私は構いませんよ」
「いや、良い。僕がやるよ」
僕なりに、男子としての気遣いのつもりだったんだけど。
絃子が良いと言うのであれば、採寸するのは吝(やぶさ)かではない。
「じゃあ、はいっ」
絃子はドンッ、と胸を張った。
ぷるんっ、と大きなバストが揺れる。
「・・・っ。う、ウェストからだね」
胸周りは、既に採寸が済んでいる筈。
「ぶー」
口を尖らせる絃子をよそに、僕はウェストに巻き尺を這わせる。
「ハチジュ・・・ナナジュウキュウ、だね」
絃子のウェストは、『79cm』だった。
「次はヒップだけど、本当に良いの?」
「もー、何を今更・・・。前も測ったじゃない」
それは、そうなんだけど。
童顔な芽衣子と並んで居るせいか、絃子は大人びて見えて。
美形な筋肉巨女の臀部に巻き尺を這わせるのは、経験の有無に関わらず緊張する。
「・・・132」
わかってはいたけど、凄まじいヒップサイズ。
それも、その筈。
「109・・・」
ティーン女子の太腿が何と、メートル超えの『109cm』。
まあ、前に測った時も『103cm』あったんだけども。
「でしょ?」
「確かに、そうだね」
芽衣子の数値と比較すると、絃子の言った通りだった。
「もっと、お肉を付けないダメかー」
「ええっ? もっと、大きくなりたいの?」
測ってみるまでもなく、絃子は既に凄まじいまでのサイズを誇っている。
筋力面でも、何かしらスポーツをやるだけで無双出来るだろう。
「だってー」
絃子は、どうにも芽衣子と張り合いたいらしい。
「それ以上大きくなると、ホントに着る服なくなるよ」
「・・・う」
只でさえ、今日二人が揃ったのはそれが原因なのに。
「今日は、どっちが似合ってるか見てよね」
「え。そういう趣旨なの?」
そうだよ、と絃子は然も当然かのように頷いた。
果たして今、床に転がっている大量の衣類の中に。
二人の筋肉巨女が着通せる服が、本当にあるのか。
僕は内心、不安なままファッションショーに突入して行くのだった。
