穴の向こう側①
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近所の公園のトイレの中、オレはスマホを弄っている。流行っているから、という理由でとりあえずインストールしてみたゲームだが、正直面白さはあまりわからない。空いた時間に勉強、なんてガラではないから、とりあえず暇を見つけてやっているだけだ。
オレは今バイト中だ。隣の個室に通じている壁の穴、そこからチンポを挿し込んでもらい、手なり口を使って「ご奉仕」する、最悪なバイト。待ち時間は長いし生臭いチンポの相手をしなきゃいけないしで最悪なバイトなんだが、それに見合うだけの金は貰える。そう、金が全てだ。

こう言うと、世間の大人たちは「何を生意気言ってんだ」と鼻で笑いそうだけど、それは痛いトコを突かれてごまかしているだけだと思う。だって事実だから。
十三年間も生きれば、自分の家が特別裕福じゃないこと……もっと言えば、貧乏だって気づく。クラスメイトのボンボンが当たり前に買ってもらっている最新のスマホやゲームは、オレにはもう別世界のものだ。中学への進学を機に親に拝み通して買ってもらったこのスマートホンだって、二世代前の型落ち品。別に親に恨み言を向けるつもりはないが、友達が当然に手にしているものを羨ましいと思わないほど無欲なわけでもない。
そこでオレは、この型落ちのスマホを使って、なんとか金を稼げないか調べてみた。ネットを使うと、なんだかいろいろな方法があるみたいだけれど、バカだから頭を使って金を稼ぐことは難しい。となれば、一番単純、かつ効率のいい方法を取るしかない。……つまり、カラダを使って稼ぐのだ。
でも、それにしたってバレないように注意を払う必要がある。うまい方法を、ウンウン唸って考えた。ある日の学校の帰り、急に催して公園のトイレに駆け込んだとき、ボロボロになったトイレの個室のドアに穴が空きかかっているのを見て思いついたのが、この方法だ。
まずはネットでこの近くの学校の掲示板を探す。表にあるような小綺麗なやつじゃなくて、もっと「裏」っぽいところ。そこに匿名でこう書き込むのだ。――「✕✕公園の男子トイレには、金を払えばチンポをしゃぶってくれる変態がいるらしい」、と。
大抵は罵倒されて終わりだが、見ている奴はしっかり見ている。
あとはそこに続けて「やり方」を書き込んでやれば、客の方から出向いてくれる、という寸法だ。
怖いもの見たさも手伝ってか、オレが思っていたよりも客の出入りは多かった。たまに集団で来て、順番に全員を相手しなきゃいけない時もあるから大変だったりするのだが、そのぶんがっぽり稼げる。お陰で最近は随分と財布の中が膨らんでいる。親にバレると面倒だから派手に使うことは出来ないのだが、札の数が増えていくのを見るのだけでも楽しかった。
このままもっともっと金を貯めて、夏休みあたりに一気に使ってしまおう。旅行に行ってみたりするのもいいかもしれない。どこへ行こう?誰を誘おうか。ーーそんなことを考えていたらふと、汚れたトイレにふさわしくない、甘ったるい匂いが鼻をついた。隣の壁の向こうから漂っている気がする。
唐突にこんこん、と音がして、オレは思わずびくりとしてしまう。
しばらく待つと、更にこんこんと音がする。オレは更に待つ。今度はこん、と一回だけノックしてきた。二回、二回、一回。客が来たことを知らせる合図だ。隣の個室に人が入った気配なんてなかったのに、いつの間に入ってきたのだろう。――そんな疑問は頭の隅に追いやって、今度はこちらから、こんこんと二回ノックする。すると、申し訳程度のカモフラージュである張り紙が捲れて、壁の穴から折りたたまれた札が伸びてきた。
これを札を受け取ればケーヤク成立だ。口でするか手でするかは金額によって決まる。丁寧に折りたたまれた札を手に取り、柄を確認する。――口でして欲しいらしい。
オレは壁の穴に向き直り、「仕事」の体勢に入る。すると、壁の向こうから声が響いた。
「へぇ、噂は本当だったんだ。壁越しに、っていうのは恥ずかしいから?」
たまにこんなふうに話しかけてくる奴もいるが、オレは全て無視している。余計な詮索をされるのはゴメンだったし、後で妙な拗れ方をされても面倒だ。こうして無言を貫いていれば、大抵は察して黙るのだが、今回の相手は手強い。
「いいじゃん、教えてよ。色々聞きたいんだよね。フェラしてるときはどんな気持ち?興奮する?カウパーの味ってまずくない?」
面倒になったオレは、無言で壁を殴って不快感を露わにする。「仕事」以外で関わりを持つつもりはない、そう示したつもりだったが、壁の向こうのそいつには、全く通じていないようだった。それどころか、妙なことを言い出した。
「そういえばボクが何なのか説明してなかったね。ボクはキミら人間が言うところの『悪魔』……それも、エロいことが大好きな『淫魔』なのさ。特にキミらみたいな年頃の子が垂れ流している精気が大好きでね、噂を聞いていてもたってもいられなくて来てみたワケよ」
オレは言葉を失った。こいつ、頭おかしいんじゃないのか?それなりに多くの奴を相手にしてきたが、こんなわけのわからない奴が来たのは初めてだ。関わっちゃダメなタイプなのかもしれない。先程受け取った札を、突き返したい衝動に駆られた。
「……まぁ、信じらんないか。別にいいけど、仕事はちゃんとしてもらうよ。金は受け取ったんだから契約成立だ。悪魔との契約を破ると後が怖いぜ?」
あくまでこのキャラを貫くらしい。呆れ混じりの溜め息が漏れる。ここまでイカれていると、怒らせるのは逆に怖い。さっさと出すものを出してもらって退場願おう。オレは穴を見つめ、ただ待った。
やがて穴から、まるで別の生き物のようににゅるりと一物が顔を出す。オレは思わず息を呑んだ。
――でけぇ。
その②↓
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お世話になっております。とえるです。
9月に入って一発目の更新ですが、ちょっと連載形式でやってみようかと思い至ったので試験運用です。出来れば毎日更新!……と行きたいところですがリアルとの兼ね合いもあるので確約できない部分もあります……でもできるだけ頑張ります!
全4回予定で、第3回以降から支援者様限定での公開になるかと思います。よろしくお願いします!
