凜華【カット7】

凜華【カット7】


 ベッドに大の字に縛りつけられた凜華の裸体に、狩人は手を置いた。

 黒いゴム手袋に覆われた指先が柔肌をなぞり、空手の鍛錬で絞り込まれた肢体を確認していく。


「見事なもんだ。無駄な脂肪がほとんどないな。それでいて、このバストのボリュームか」

「んんッ!!」


 仰向けになっても形の崩れない乳房をわし掴みにして、その弾力を確かめる。

 容赦ない力の入れように、凜華が柳眉をつり上げて睨みつけてくる。

 いままで、その乳房を触れることが許されたには恋人であった先輩だけだった。いまだ彼を忘れられない彼女にとって、その淡い恋人としての記憶を汚されているようで、我慢できないのであった。


(腕が自由なら、殴り飛ばしているのに……)


 四肢の自由を奪うベルトは、いくら力をこめても緩む気配はなかった。ギシギシとベルトが立てる音だけが聴こえてくるだけだ。

 そんな状態では、今の凜華にできることは、卑劣な罠にはめた目の前の男を睨みつけることだった。

 射殺さんばかりに殺意をこめてギンと睨みつける。だが、その行為は相手を喜ばせるだけだった。


「その調子で少しでも長く楽しませてもらおうか」


 鋭い眼光を正面から受け止めながら、狩人は指先で乳首を摘み、刺激を与えてみせる。

 すると、刺激に耐えきれずに凜華が眉根を寄せてブルブルと身体を震わせてしまう。


「感度は悪くない……いや、男性経験が少ない割には良すぎるぐらいだな」

「うむぅぅ……ぐぅぅ……」


 さらに感度を調べるべく凛華の身体を調べていく。

 調査によって凛華の男性経験はひとりだけ、しかも回数もそう多くないのはわかっていた。当然、肉体は開発されていない状態のはずだが、感度の確認をしながら狩人は、わずかな違和感を受けていた。


「……バストだけ、妙に感度がよいな………オナニーを結構してるだろう?」

「ーーッ!?」

「どうやら、図星なようだな」


 狩人の指摘に、根が素直な凛華は顔に動揺を出してしまう。

 性的なことに密かに興味を持っていた凛華は、交際によってセックスの良さを知ってしまった。

 だが、彼女を大事に扱ってくれる兄弟子に対して、それを全面的に出すことは憚られたのだ。

 もちろん、厚い胸板を心強く感じ、愛する人との逢瀬は胸をあたたかく満たしてくれた。

 ただ、彼女を大事にする故にか、まるで壊れ物を扱うように繊細に接してくれることに心の片隅では物足りなさを感じてしまっていたのだ。

 それ故に、彼を思って自慰行為をするときは満たされぬ想いを満たすかのように荒々しいセックスを想像していた。

 自分より強い肉体に押さえ込まれて荒々しく突かれ、時には四つん這いなって獣のように交わる。

 それは恋人と別れて続き、女子大で友人たちから聞かされる経験談によって、より過激に味付けされてきているのだった。


「お前、優しくされるより、こうやって無理やりな方が感じるんだろう?」


 気丈な女を堕とすのに特化してきた狩人は、凛華のようなタイプの女を何人も調教してきた為、その心中を的確に把握してくる。

 特に凛華はポーカーフェイスを装っているが、意外に感情を把握しやすい。瞳を凝視していると、心の揺れが顕著にみてとれるのだ。

 その他にも細かな仕草にも感情は現れており、狩人は事前の観察でそれらを把握しているのだった。

 今も無意識に視線を逸らそうとするのだが、顎を掴んで押しとどめる。覗き込まれて、凛華の瞳が激しく揺れ動いてしまう。


「実は恋人とのセックスで、ちゃんとイッたことないんだろう?」

「うぅぅ……」

「なるほどな、それで妄想では激しい行為を思い浮かべてたってわけか」


 これまでの経験を踏まえて質問を投げかけては、細かな反応から実情を暴いていく。心理カウンセラーばりに好みの女の内面を暴いていくのも、狩人が得意とすることであった。

 その光景を周囲に設置したカメラが映し、配信者たちを大いに盛り上げさせる。ひた隠しにしていたモノを暴かれて、凛とした女が動揺する姿が愉しくてたまらないのだ。

 当然なことだが、気丈な女を牝奴隷に堕とす配信に集まる輩は、同じ嗜好の持ち主なのだ。


「やはり、お前もマゾっ気が強いみたいだな。言葉で嬲られて悔しいと思うともに、密かにゾクゾクしてもいるだろう?」

「んんーッ」


 違うと抗議の呻きをあげる凛華であったが、すべては否定できないと囁く自分もいた。


(違うッ……そんなんじゃないから……)


 迷いを振り払うように、キッと目の前の男を睨みつける。だが、その意志とは裏腹に男の与える刺激に肉体は反応してしまう。


「ぐぅぅッ」


 指先で押し潰された乳頭を捻りあげられて、激しい痛みに凛華は顔を歪める。だが、先ほどの狩人の言葉がキッカケとなって、その中に得も言えぬ刺激を感じ取ってしまう。


「うふぅ……んッ……んんぅ……」

「さっきよりも反応が良くなってきたな。マゾを自覚してきたな」


 耳元でマゾと囁かれるたびに、凛華の肩がビクッと震え、恥辱によって顔の赤みがましていく。


(違う……そんなんじゃ……マゾなんかじゃない……はずなのに、なんでアタシは感じちゃってるのよ)


 狩人の言葉を否定できないほどに、感じている自覚があった。耳元で囁かれる蔑む言葉すら、甘い刺激となって脳を震わせてくる。


「マゾの自覚ができて、いい顔になってきたな。それじゃ、ご褒美に本当の牝の悦びってヤツを身体に教えてやるよ」


 狩人は手にはめていた黒いゴム手袋を外すと、新たに紫色の手袋を装備する。それは指先から掌までビッシリと突起が生えている奇妙なものだった。

 その外見はまるで管足がならぶヒトデのようで不気味であった。それを両手にはめると、ボトルに入れた性感ローションをまぶしていく。トロミのある粘液は手袋の突起に絡みつき、妖しくヌメリ光っていた。


「さぁ、こいつで強張った身体ごと心も蕩けさせてやるよ」

「う、うぅぅ……」


 サメのような鋭利な歯をみせてニヤリと笑うと、狩人は目の前の裸体に触れてくる。

 ベッドに大の字に拘束された凛華は逃げることも抗うこともできない。

 噛まされている開口具をギリっと噛み締めて、反応するまいと身構える。

 手袋の突起はシリコン製で、想像してたよりも柔らか感触だった。痛みはなく、普段では感じることもない奇妙な刺激を柔肌に与えてくる。

 加えて狩人の愛撫も先ほどから一転して優しいタッチだった。

 

(これなら耐えられそう……でも、なんだろう……なんか奇妙な感じ……)


 なにかが肌の上をはい回るような感じに近い。刺激自体は物足りないほどなのだが、無視することもできない。


「うふぅ……うん……んッ……んぅ……」


 刺激は敏感なところを微妙に避けてきて、もどかしさに発車をかけてくる。いつしか瞼を閉じて感覚を追うようになっており、拘束された裸体が切なげに揺れてしまう。


(ーーあンッ)


 不意に指先が乳首をかする。すでに十分過ぎるほど勃起きた乳頭は、空気の揺れさえも機敏に感じ取っていた。

 そこに刺激を受けて、つい甘い声を漏らしてしまう。

 だが、そのことに気付かないほどに凛華は刺激を追うことに集中してしまっていた。


(あぁ、もっと……もっと刺激が欲しい……)


 恋人だった兄弟子も事前の愛撫はしてくれていたのだが、ここまで焦らされることはなかった。

 すでに秘唇はプックリと充血して、物欲しそうに口開いている。その隙間からは愛液があふれ出して、シーツへと滴りはじめている。


「あふぅ……」


 不意に開口具の穴を塞いでいたゴム栓が外された。その内側はゴム製のディルドが続いており、凛華の唾液まみれになって、口腔よりズルリと抜き取られる。

 新鮮な空気が入り込み、肺を満たしてくれた。代わりに、これまで押しとどめられていた媚声が堰をきって溢れ出す。


「あぁ……あン……うふぅぅ……」


 熱く切ない吐息が、媚声とともに開口具の穴から溢れ出してくる。

 すっかり蕩けきった顔をする凛華に狩人は笑みを深めると、指先を切り開く秘門へと向かわせる。


ーーグジュリッ……


 埋没した指に押し出されるようにして、大量の愛液がシーツへと糸を引いて落ちていく。

 その量は指を前後を動かすたびに倍増していった。そして、待望の刺激はこれまでに経験したことのない甘美さをもって凛華の心身を震わせる。


「おぉぉぉぅッ……」


 指に合わせて勝手に腰が持ち上がる。ギシギシと拘束ベルトを軋ませて、カクカクと腰が動いてしまうのだ。


(あぁ、ダメ……これはダメよ……)


 理性が刺激にひそむ危険性を警告していた。だが、与えられる刺激に対する身体の反応は、もう止められはしない。

 官能の門はすでに開かれている。そこへ向かって急激に昇りつめていく。


(あぁ、なんかきちゃう……あぁぁ、これが逝くなの?)


 クラスメイトが口にしていた絶頂への感覚。それを今、自分も感じているのだ。

 もはや誰に与えられているなど考える余裕もない。目の前の眩しい輝きの中へと、凛華は飛び込んでいくのだった。







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