凜華 【カット1】

イラストにちょっとした文章をつけてみる試みです。


【カット1】地下サイトの配信者


 この国一番の繁華街は、金曜日の夜ということもあって、いつもより多くの人で賑わっていた。

 暑い夏を過ぎ、日が暮れると途端に涼しげな日々となっていたが、人々の熱気が相変わらずだ。

 左右に壁のように建ち並ぶビルには飲食店の看板が並び、仕事帰りのサラリーマンや大学生の集団が、次々と飲食店へと吸い込まれていく。

 すでに一巡目を終えて、行き交う人も赤ら顔が多い。陽気にはしゃぐ集団が、そこらかしこに見受けられた。

 そんな酔客で賑わう大通りを、ひとりの男が歩いていた。

 革パンツを履いた長い脚が目を引き、優に百八十センチを超える長身の持ち主だ。上半身は逆三角形を描き、はだけた胸元からは鍛えられた胸筋が垣間見える。切れ長な目に通った鼻筋と顔立ちも悪くないといえた。

 年は二十代後半にみえるが、長髪の首の後ろにまとめ、耳には金属棒のピアスを下げている姿からは、会社勤めの社会人にはとても見えない。

 そんな彼だが、目的もなく夜の歓楽街をさ迷っているようにみえる。それでいて、双眼がなにかを求めているように周囲に向けられている。


「チッ、なかなか良さそうなのがいねぇなぁ」


 彼の目は行き交う人の中から女性だけに向けられていた。だが、ナンパというのにも少し感じが違うようだ。

 目立つ風貌と危険な香りが漂う彼に、興味を持った酔ったOLや女子大生が声を掛けてくるのだが、冷たい視線を向けては追い返しているからだ。

 しばらく、そうして周囲を歩いていた彼だったが、不意に足を止めた。振動するスマートフォンに気づいたからだ。

 胸元から取り出した端末に表示されるメッセージをみて、彼は口元を綻ばせる。


「やはり、こういう時に頼れるのは熱心な視聴者さまだよなぁ」


 口端をつり上げてニヤリと笑みを浮かべる。その笑みは、みた者の背筋をゾクリとさせる実に残忍で冷酷なものであった。

 残忍な笑みを浮かべる男の名は狩人(かりと)、あらゆる非合法な品が売買されているアンダーグラウンドサイトで、人気を博している配信者であった。

 そんなサイトで扱われる配信映像であるのだから、もちろんまともな代物ではない。一般女性を快楽漬けにして、男の欲望を受けいれる牝奴隷へと調教する過程を配信しているのだった。

 人がターゲットに選ぶのは気の強い美女だ。反抗的であるほどに彼は燃えるのだった。

 そして、新たな獲物を求めて、今夜は歓楽街を探索していたのだが、熱心な視聴者からの情報提供があったところだ。

 アンダーグラウンドは配信者をサポートする一環として、情報提供や協力を申し出た者に対して、独自流通させている電子通貨を与えるなどの様々な恩恵を与えていた。

 お陰で人気配信者は個人でありながら、獲物に関する情報や撮影に関する協力を得ることができるのだった。


「へぇ、聖ミカエル大の女子大生かぁ……こりゃ、期待できそうだ」


 今日の狩場は繁華街にすると事前に告知してあったため、飲食店に勤務する視聴者から来店した女性客をターゲット候補として触れ込んできたのだった。

 もちろん、それで即採用となるわけではない。狩人は好みがうるさく、こだわりも多いのが難点なのだ。


「んじゃまぁ、お眼鏡にかなうか、早速品定めに向かうとしますか」


 取り出したカメラに向かって実況報告すると、彼は連絡のあった店舗へと向かうのだった。

 




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