【MV小話】『サワーチェリーが輝いたから』ができるまで
nekomoです。
みなさんは、海茶さんの『サワーチェリー』『弦楽少女』『幕パレ』の三部作の中でどの曲が一番好きですか?
甲乙つけがたいですよね。
私もあえて一つ選ぶのはとても難しいのですが、あえて選ぶならですよ、おそらく本作『サワーチェリー』です。
サビのメロディが個人的にド好みなのと、単に私がピンク好きなだけですね。
これら3作は、楽曲もMVも、
『幕パレ』を最高の楽曲にすることを大前提としつつも、ほか2曲もそれに決して劣る事なく、どれも良い曲になるように制作することが目指されています。
80点と80点の楽曲を足して100点にするのではなく、100点と100点の楽曲を足して120点にするのです。
一番好みの曲を訊いたならば三者三葉に分かれることも、
どの曲も好きなのに幕パレを聴いたあとでの2作にはどこか欠落したような違和感を覚えるのも、
驚くほど狙いどおりの結果です!
あまりに良い作品となったので、『サワーチェリーが輝いたから』が公開された時点で、続編のある楽曲だとは、それもまさか合体前の楽曲だとは誰も気が付かない事態となりました。すごすぎる!
今回はそんな第一陣『サワーチェリーが輝いたから』のお話です。
【楽曲のこと】
曲調はサイケデリックトランスのような雰囲気をベースにしつつも、パレードらしいアコーディオンや笛、オルガンの音色が時折顔を見せるような仕上がりに。
歌詞や絵面はカワイイのに、どこか重く不思議な雰囲気も持ち合わせています。
【MVのこと】
はじめに。
本作は特に「プロっぽい」体制をとって制作されたMVといっても過言ではなく、ご依頼を受けて制作させていただく仕事人としてはメキメキと力がつくとても良い経験になりました。
参加者全員の手癖がそのまま表れる、というよりかは、TVアニメーション作品や、学マス・ホロライブ等の大規模MV、企業プロモーション映像の現場みを少々帯びた、多くの方の手が動く布陣となっています。
ボカロシーンにおけるクリエイターさんの個性に注目して楽しんでくださる風潮を受けて便宜上、作風がわかりやすく表れている方々が目に入りやすく、ごちゃつかないクレジット表記をしていますが、実際のところ以下のような感じで進められていました。
■作詞・作曲・編曲 / コンテ草案
海茶
■キャラクターデザイン原案 / 絵コンテ
リップちゃん
■制作進行 / 作画監督
nekomo?
れでぃば
■原画
れでぃば
nekomo?
■キャラクターイラスト
リップちゃん
■ピクセルアート
nekomo?
■作画
れでぃば
nekomo?
コトバッチ
後ろ
シキ式
桃寝ちのい
るねつき
煮六
■映像
れでぃば
まずはご協力くださった方々に盛大な拍手をよろしくお願いします!
様々な事情がありながらも、まったくクオリティに違和感がなく、非の打ち所がない傑作に仕上げることができたのは、ひとえにご協力いただいた全員の努力によるものです。
お菓子や童話にまつわるかわいい語彙がたくさん登場する、メルヘンチックで甘ったるい歌詞と、その裏にほの暗い陰が落ちる本作。
どのような絵面に落とし込んだらちょうどいいか、その方針に一番難航した印象があります。
不穏な感じをひとつまみしたいけど、やりすぎると逆に凡庸に……、びっくりさせるのもホラーチックにするのもなんか違う……?
劇団イヌカレーっぽい感じ、「君の知らない物語」のような絵柄、パッチワークのような雰囲気、マーブル模様、万華鏡のようなサイケデリック演出、宗教画のような画……どれも一度は考えましたがそれらを露骨に・目立ってやるのは違うかもねとなったり。
こういう背景にしようかなぁと考えていたこともありました。
これはサンリオVフェスというイベントに出てきた、ポムポムプリンくんの精神世界みたいなやつです。やばすぎ
資料になる!と思ってたくさん撮りました
色々考えて、あとで書きますがコンテの工程も経て、最終的には女児向けアニメのようなタッチで、この楽曲に登場する茜ちゃん視点のように甘くてかわいくてフワフワとした体験を届けつつもちょっぴり不思議な後味とすることに落ち着きました。
流れとして、やることは魔法少女まどか☆マギカやがっこうぐらしに近いかもしれないけれど、もっとこう、かわいく
こんなのがかわいいと思う。いやこれよりもやさしくね……
●絵コンテ/キャラクターイラスト:リップちゃん
コンテを作るとして、
本作は物語性のある楽曲ということもあり、つい「起こっていること」を随一まっすぐに描写しそうになります。が、それじゃ説明的すぎて野暮ったいかな……?という懸念を抱きつつ、もうちょっと協議を重ねながら、
今作の主にキャラクターイラストを担当されているリップちゃんによるコンテ大改築が行われていくことに!
ここから形成されたアイディアはことごとく独創的で、本作を彩るに相応しい絶妙な世界観に仕上がりました。
リップちゃんは、頭の中がお花畑……まちがえた
甘い夢の中のようなビジュアルづくりが得意なクリエイターさんです。
常にお花や雲、フリルやリボン、魔法のステッキ、かわいい女の子などのモチーフが自然と浮かび上がって脳内で動き出しているような、特有の感性と世界観を持っているお方です。
そんなリップちゃんに『サワーチェリーが輝いたから』を聴かせると茜ちゃんがたちまち自由に動き出し、
甘くてかわいく、それでいてどこか不思議な空気感を持つMVの流れが完成しました。
ウェディングドレスの茜ちゃんも、魔法少女に変身する茜ちゃんも、ふわふわの天蓋付きベッドのような場所で眠る茜ちゃんも、ここから生まれました。他のひとでは作れなかったと思いますし、本作の映像表現の指針を決定づけた要素だと考えます。
このあとキャライラスト担当となりましたが、一部どうしても背景と合わせて1枚絵として完結してほしい3~4カット程度は背景込みで制作いただいています。
それらのカットだけ雰囲気が浮いてはいるのですが、ちょうど世界観が強く出るべきシーン達で、夢なのかなんなのかわからなくなっちゃいそうな感じを後押しするものとなったと思います。
ちょっと余談。
一部シーンで目が黒くなるのはリップちゃん(とnekomo)の性癖と強い欲望が反映されています。
すなわち、シャドーハウスのエミリコです。
このように、茜ちゃんが幻想的な状況であるのをいいことに、好きなものをできる限りねじ込んでいます。
あなたがこのMVをみて"癖"を感じた場合は間違いじゃないということです。
●ドット絵: nekomo
どうやって思いついたんだろ、この振付
ドットアニメ終盤で茜ちゃんの持つステッキは、
『幕パレ』用のドット絵を作ったあとに描き加えるかたちで制作したのですが、
これが思ったよりもサマになった自信があります!
音ハメ三連撃のステッキ構え➧くるくる振り回しモーションが見ていて気持ちが良いですね。
ここだけで26枚あります。ひぃ
ラスサビ用の差分。
最後にお辞儀するところが好きです。見ているとゾッとする良さがあります。
主に間奏で長い時間表示されることとなる回転のモーションは、
・スカートをふわっとさせる。フリルの質感を表現する。
・髪の毛などもふわっとさせてみる
・一部のコマはちょっとだけ傾けてみる
・動きに緩急をつける
・バレエのような雰囲気を意識
などなど、こだわりと挑戦をたくさん込めています。
お人形さんみたいでころっとふわっと可愛い動きになってお気に入りです。
なぜこうしたのかというと……、
間奏で回転するって、「なんとか鉄道の夕」でもう表現されているんですよね。
もっと言えば、「おとロボ」でも一部やってしまっています。
それでも回したかった……!ではどうやって差別化するか。
その解決策は……
めちゃくちゃ凝ってめちゃくちゃ上手く描くことです。
めちゃくちゃ凝ってめちゃくちゃ上手く描けば差別化になるでしょう!!!
パワー型解決策!
今後の作品のハードルを上げてしまったかもしれない……
ちなみに逆回転バージョンも作っていて、間奏では順回転・逆回転両方の茜ちゃんのシルエットがいるはずです。
(逆回転は、コマの順番を変えるだけじゃなくリボンの動きが変化しているので、若干描きおろしです)
●背景等イラスト: れでぃばさん+他7名程度
●映像: れでぃばさん
ここからは、背景や映像の制作チームの登場!
いよいよ本格的な制作現場の空気が立ち上がってきます、面構えが違う。
第一陣を飾る本作、何があっても手を抜くわけにはいかないのです!!
絶対に、幕パレの2週間前におひろめしたいのです!!
最高の作品にする!!!
改めて多くの方々が背景・素材制作などで関わってくださいました。
●れでぃばさん:
色々な作風や役割で活躍中!様々な現場を経験してきたのだろうということが感じられました。
●nekomo:
やるときは身を焦がしてでもやります。制作進行兼。
●コトバッチさん:
経験豊富かつ、共作者へのリスペクトも強く持って丁寧に臨んでくださいます。
●後ろさん:
絵で目標や納期を打ち倒すのが大好きな戦闘狂。闘志を燃やして描いてくれます。
●シキ式さん:
最近はイラスト以外に映像やアニメーションにも挑戦されている創作意欲デカ人!
●桃寝ちのいさん:
作風を寄せた再現・リスペクト創作が上手。作画をサポートしていただいて間違いなし。
●るねつきさん:
ピクセルのものならピカイチ。『弦楽少女』では多くのシーンを制作!今回は最後のロゴを作ってくれました。
●煮六さん:
『幕パレ』でも背景などを担当。同様に美術まわりが強いです。
全員が重要なパートを担い、それぞれの得意分野を最大限に発揮してくれたと思います。本当に本当にありがとうございました!!!
どのシーンを誰が担当したのかを想像しながら観てみるのも楽しいかもしれません。
……たぶん見てもわからないかもしれません。それくらい上手くまとまりました。
なにより作画タッチの基礎を作ってくださったれでぃばさん!
映像編集だけでなく、イラスト制作まで手掛けられるオールラウンダーです。
今回は映像編集としてのお声がけが主でしたが、並行してイラストも担当してくださいました。
本当に頭が上がんない!
かなり早期の段階でお声がけがされました。
というのも、今後ますます多忙になりそうな方だと思ったので、早めにスケジュールを押さえておきたかったのです。大物の予感です。
ほら言わんこっちゃない!!!
今回、お呼びできてよかったです!
また軽率にお声がけさせていただきます!!
れでぃばさんには作画の方向性や塗りのタッチを選定していただき、まず最初の一枚を描いていただきました。
それからキャンバスサイズや使用するブラシ設定、使用する色に至るまで連携して、作画が始まります。
様々な方の支えによって作画班全体の流れが整っていきました✨
(私もすごかったですよ)
あとはみんなで
グワーッと
ドシャーッと
バババーッと
描きつつ、映像編集していただいて完成!
グワーッとドシャーッとバババーッとね。
せっかくなら作画時につくったたくさんの資料をチラ見せしてもいいかな……と思って見返したのですが、あまりにも内部的で面白みには欠けるかな~と思ったのでこれは割愛しちゃいます。
もちろん映像編集も抜かりないクオリティで完成していただきました。
今作において早期段階から「やってみたい表現」がたくさんあったのですが、(やっぱり要らないなと感じたもの以外)すべてがばっちり反映されています。
改めまして、全員がMVP、このメンバーが揃ったからこそ実現した傑作がこのMVです!
本当にくどいようですが全ての方々に敬意を払わせていただきたいです!
多くの努力と奇跡の上につくられた大作!何度でも観返したくなりますね。
海茶さんの久しぶりの新曲MV、かわいいと思いきやなにやら……!?とどよめく視聴者の反応をみて、
続く2作品の序章としてばっちりと思いました。
そう、これで序章なんですよね……。
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切実すぎる感謝↓
