尻を振り、砕け散るプライド
"姉が強いか、妹が強いか"
国内最大手の女子プロレス団体・BZMには羽山麻里香(21)と河合モカ(20)からなる「マリモカ」というユニットがある。
プロレスラーでありながらTikTokerとしても活動しており、可愛らしいルックスとリングでの荒々しいファイトが醸すギャップがウケて、実力とはまた別の人気・影響力もあわせ持っていた。
そんな麻里香とモカは、プロレス界の外から話題や新規ファンを集めようと一計を案じる。
それが、同団体に所属するそれぞれの姉たちとの「姉妹対決」であった。
上記のフレーズは、試合への興味を煽り、注目を集めて対決を実現させるべく、2人が考案したキャッチコピーである。
麻里香とモカはSNSの共同アカウントにこの一言だけを添えて投稿した。
すると
「おねえちゃんたちと戦うの?」
「いよいよ来た!?」
「ずっと見たかった!!✨」
など……ファンから試合への期待を寄せる数百件というリプライが届き、未だ内定もしていない姉妹対決に対するボルテージは大いに高まる形となった。
彼女らはもちろん2人の姉…羽山蘭子(24)と河合エミリ(23)もまた、女子プロレスのスター選手だったからだ。
投稿のバズを受けて団体の上層部は麻里香とモカを本社へ呼び出す。
当然だが通常は、プロレスの試合は興行であるため選手たちの大元となる団体サイドが対戦カードを組む。
ゆえに選手には本来マッチメイク権などなく……姉たちの承諾、試合会場のアポ取り、本来踏むべき段階のすべてを通り越して試合の既成事実だけを作るという身勝手について詰問したのだ。
まして、姉妹対決は引き分けにならない限り、どちらかに必ず土がつく。
蘭子・麻里香、エミリ・モカがいずれも人気選手であったために、BZMもその関係性を把握しながらあえて戦わせなかったのだ。
だが結果としてタブーも同然となったこの姉妹対決はファンの間でも「戦えばどちらが強いのか」という議論が常態化し、SNSやネット掲示板などでも絶えず実現を望む声はあがっていた。
マリモカの2人はここに目をつけ、出来上がった既成事実を駆使して団体の役員たちを前に言葉巧みにこのマッチメイクが持つ話題性や集客力を説き
「蘭子・エミリの了承が降り次第」の条件つきでこれを認可する。
だが妹たちからの挑発を彼女たちが無視するわけもなく…………。
ここに、長らく避けられてきた
「蘭子・エミリvs麻里香・モカ」という
姉チームと妹チームの
負けられない女の戦いが実現を見ることとなった。
【世間の反応】
"姉が強いか、妹が強いか"
あえて大きな主語を用いた過激なフレーズは、マリモカの目論見の通りプロレス界隈を飛び越えて様々な反応を巻き起こした。
自身も姉である者や蘭子・エミリのファンはプライドを刺激され
「姉に決まってるでしょ」
「うちも妹いるけど昔から口でも力でも負けたことないよ?」
「あの2人がボコられてるとこ見たいw」
「蘭子ちゃんと麻里香ちゃんじゃ体格が違いすぎるよ」
「モカちゃんは可愛い担当だし強いイメージはないけどなぁ」
など勝って当然、負けたら自分たちまで悔しい、というマウンティングにも似た書き込みが目立った。
また、マリモカのファンや自らも妹として理不尽を体験してきた者は
「わたしも姉持ちだから、マリモカに勝ってほしい!?」
「本気なら少し歳が上だからって関係ない、センスや努力量で上回る方が勝つし、私はそれはマリモカだと思う」
「いつもお姉ちゃんと喧嘩して泣かされてる妹です(т-т)麻里香ちゃんが蘭子さんに勝ってるとこ見たい!!」
「可愛さでも強さでもモカちゃんのほうがずっと上!✨」
と……下克上を望む声が多数寄せられた。
2組の姉妹による対決はさながら、試合に注目する全国の姉・妹の代理戦争の様相を呈し
姉が強いか、妹が強いか"論争は試合の当日まで一種のムーブメントとなって、白熱することとなった。
【会見 羽山姉妹の場合】
Q.お互いへの印象と試合への意気込みを教えてください
蘭子「私の背中を追いかけてプロレスを始めたようなヤツに負けるわけないでしょ?麻里香は妹でもあり、後輩でもあるんです」
「試合も楽勝です。このクソ生意気なちんちくりんに1回、子どもの頃みたいに上下関係を叩き込んでやろうかなと思います」
麻里香「あ、ウチの番?え〜、コッチがちんちくりんていうか、おねえちゃんがでっかいんでしょ?特にこのハムみたいな…お・け・つwww」
蘭子「はぁっ!?//////」
麻里香「器はウチのがおっきいですけど…お尻はおねえちゃんのがおっきいのでw」
ぺちんっ♡♡ぺちんっ♡♡
蘭子「ちょっと!!////」
麻里香「モカちゃんのほうもエミリさんには色々不満溜まってるみたいですし、マリモカが全国の妹を代表して、妹のが強いんだっていうのを教えてあげようかなってw」
「あの投稿は偉い人たちに怒られましたけど、それをハッキリさせたいがために発信したものなので」
「宣言しますね、勝ちます。で、おねえちゃんいつも試合のときは下着で黒いTバック履くんですけど、コスチューム剥ぎ取ってファンの皆さんに見せてあげようかなと思いますww」
蘭子「……!!///
お客さんは残念でしょうけどそれは見せられません。代わりに、コイツのガキンチョみたいなパンダ柄パンティ見せてあげますから、それで我慢して頂くことになると思います」
【会見 河合姉妹の場合】
Q.お互いへの印象と意気込みを教えてください
エミリ「妹はぶりっ子で腹黒くて…昔から目障りでした、こんなのと同じ屋根の下で暮らして…大人になってもまさか、プロレス界でも一緒になるなんて」
「でも試合は良い機会ですね、アイドルレスラーなんてぬるいこと言って客に媚びてるような選手は個人的にも大っ嫌いなので、やっと容赦なく叩き潰せます」
モカ「こわーっ♡ん〜、おねえちゃんへの印象ですか?昔からこんな風に怖くて、ひどかったですよぉ♡」
「可愛いモカにヤキモチ妬いて叩いたり意地悪したり!1番酷かったときはママからモカの前でおしりぺーンペーンって叩かれて、それからは家では何もされなくなったんですけどぉ♡」
エミリ「ちょっ………!!!!//////なんで今言うのよ!!////」
モカ「でもBZMに入ってからは先輩と後輩でもあるじゃないですか?そしたらまた、先輩風ふかせて、新米のモカを何回も酷い目にあわせたんですよ〜?」
エミリ「常識の範疇でしょ!アンタが簡単に練習に根上げるからしごいてやっただけよ!」
モカ「試合についてはまぁ……今までこのカードを組まなかったのは団体のやさしさだな〜って思います♡
だって、戦ったら私たちすぐ勝っちゃうじゃないですかぁ♡」
「カワイイ私と麻里香ちゃんがおねえちゃんたちなんてサクッと倒しちゃいますぅ♡」
エミリ「っ……アンタねぇ………!!!」
モカ「あ、でもひとつだけ怖くてぜーったい受けたくないっ!て技があって♡」
Q.それはなんですか?
モカ「ヒップドロップwwwこのぽよぽよでかでかのお尻がモカのカワイイお顔に降ってきたら、流石にギブアップしちゃいますぅ♡w」
エミリ「っ…………!!!//////」
モカ「あのときのおしりペンペンでおっきくなっちゃったんですかね?wwそれだけ注意しまーすw」
「あ!そうだっ、意気込みもうひとつ♡」
「あの頃はママに頼るしかできませんでしたけど、今のモカはおねえちゃんなんかよりずっと強いので、今度こそモカが自分の手で、おしりペンペンしてあげちゃおっかなって思いまーす♡」
エミリ「上等よ………!!///私こそ、あの時の分までアンタのお尻まっっかになるまでぶっ叩いて猿みたいにしてあげるわ…!!!」
(お尻のこと気にしてるの知っててこれよ!!ほんっと腹黒くて性格も最悪、ムッッカつくわコイツ…!!でも試合が楽しみ…この顔思いっきり踏んづけてやるから!)
【敗戦】
麻里香「撮るよー」
エミリ「……くぅぅっ……!!////」
蘭子「ま………っっ……////」
モカ「ほら、録画始まりますよ?」
麻里香「そうだよ、ちゃんとあの語尾もつけてよねww」
ピコンッ??
エミリ「っ……/////負けたぷりーーーーっ♡♡♡♡♡♡♡/////」
蘭子「参りましたぷりーーーーっ♡♡♡♡♡//////」
エミリ「負けっ♡♡♡負けぇぇっ♡♡♡♡/////可愛いモカ"様"にボコボコにされちゃったぷりぃぃぃぃ♡♡♡♡♡♡♡//////」
蘭子「わっ、私もぉっ♡♡♡♡////麻里香"様"は強すぎてかなわないぷりっ……/////降参するぷりぃぃぃぃ♡♡♡♡♡//////」
麻里香(あはっwwwいい気味wこんな日が来るんだからプロレスやっててよかった〜w)
モカ(おねえちゃんたち思ったより弱かったなぁ♡昔から試合見まくって癖も知り尽くしてるんだからこっちが有利に決まってるのにw)
麻里香が考案した語尾をつけながら2人が踊らされているのは現在TikTokで流行っている「ケツ振り子」という振り付け。
万歳をしながら時計の振り子のように尻をふる、コミカルとエロが融合した下品で滑稽なダンスだった。
"ぷり"と語尾につけてはいるが絵面の迫力は凄まじく、実際の音はブンッッッと扇子で力いっぱい仰いだような風を切る低い音がしたかと思えば刹那………
隣合う2人の、肉厚な尻頬がぶつかり合ってバチンッッッと鈍い音が汗とともに弾ける。
蘭子は左に、エミリは右に尻を振り、戻ってくるとお互いの尻同士が衝突する。
試合で妹たちに力の差を叩き込まれた2人は、よしの一声が出るまではこのケツ振り子を続けるしかなかった。
一方の妹たちはというと、
モカは寝そべってカメラに向けてウィンクを決め、小さく手を振って勝者であることをアピールしている。
「妹組のみんな見てる〜?」
「ほらね♡おねえちゃんなんて大したことないんだから♡」
麻里香は、試合でズタボロにされ力なくのびる姉の下半身から剥ぎ取ったコスチュームのパンツを戦利品のように見せびらかし、イタズラっ子のように舌を出してその優越性を見せつけた。
「ウチらだけが特別じゃないんだよ?」
「みんなも意地悪なおねえちゃんは同じ目にあわせちゃえw」
背後では思わず笑いそうになるほどバチンッッと力強い音が等間隔で聞こえてくるが、涼しい顔は崩さない。
麻里香「あ、そういえばさぁ…おねえちゃん昔ウチが学校から帰ってきてすぐアイス買いに行かせたよね?見たいアニメあるって言ったのに」
蘭子「そっ…それは…………」
麻里香「は?言うことあるよね?」
蘭子「ひっ…!!はいっ♡♡/////すみませんでしたぷりぃぃぃぃ♡♡♡♡///////これからは、私が麻里香様のパシリをさせていただきますぷりぃぃぃぃ♡♡♡♡♡///////」
麻里香「そうでしょ?散々姉の特権でこき使ってくれたんだから、この後さっそくディナー奢ってよね」
蘭子「んぐっ……!!あっ、も、もちろんですぷりぃぃ♡♡♡//////麻里香様の命令には逆らいませんぷりぃぃぃぃ♡♡♡♡♡♡///////」
ブンッッッ♡♡♡♡
バチィィィン♡♡♡♡
ブンッッッ♡♡♡♡
バチィィィン♡♡♡♡
モカ「ならモカも……あのさ、おねえちゃん?○学校の頃、将来プロレスラーになりたいからって言ってモカに投げ技かけたりしたよね?」
エミリ「うっ………」
モカ「同じ技でやられた気分はどぉ?♡」
エミリ「っ………!!////めっちゃくちゃ効いちゃいましたぷりぃぃぃ♡♡♡♡/////モカ様は可愛さでも強さでも私よりずーーっとずーーーっと上ぷりぃぃぃ♡♡♡♡♡♡//////」
モカ「これからはおねえちゃんがモカたちの新技の開発に付き合ってよね?♡」
エミリ「よっ……喜んでお手伝いいたしますぷりぃぃぃ♡♡♡////かわいいかわいいモカ様のお役に立たせてくだひゃいぃぃぃ♡♡♡/////////」
モカ「ぷぷっww聞き分けの良い子になったね?アレのおかげかな♡」
エミリ「はいぃっ♡♡♡/////モカ様のおしりペンペン200連発で今までのこともたっぷり反省させて頂いたぷりぃぃぃ♡♡♡/////」
モカ「そうだよね♡ママのより痛かったでしょ?あの時も脚バタバタさせてワンワン泣いてたけどwww」
エミリ「っ!!/////モカ様つよすぎてまた泣いちゃうとこだったぷりぃぃっっ♡♡♡♡/////」
ブンッッッ♡♡♡♡
バチィィィン♡♡♡♡
ブンッッッ♡♡♡♡
バチィィィン♡♡♡♡
蘭子とエミリの口から出る情けない言葉の数々。これは、姉たちの言葉は本意ではなかった。
が、試合で圧倒的な差を見せつけられ、子どもの頃から自分のほうが強いと信じて疑わなかったプライドはズタズタに引き裂かれ、心が折れてしまっていた。
鋭利な関節技や投げ技の激痛に屈し
"指定のセリフ、ダンスをしながらTiktokの動画を撮る"という試合後突然に告げられた罰ゲームも
さらなる制裁を恐れて受け入れるほかなかったのである。
と、麻里香は内カメラにしたスマホの小さな画面に映る姉の、突き出した尻の真ん中にヒクヒクと蠢く黒い点が見えていることに気がつく。
(えっ、これ穴?ww見えちゃってない?wwま、いいやw編集でハートでもつけときゃBANされないでしょw)
麻里香「よーしおっけーw良い動画撮れたんじゃない?w」
モカ「ねっ♡今回も絶対バズるよ〜♡楽しみだね、麻里香ちゃん♪」
2人はタイトルやハッシュタグ、楽曲まで細かく指示を出して姉たちに動画の編集もさせ、試合の翌日には麻里香とモカの共同アカウント「マリモカ」からの発信でTikTokに投稿された。
【TikTok】
プロレス業の傍らでTikTokerとしても著名な人気を得ていた麻里香とモカのプロモーションが功を奏し
動画はアップロードと共に大反響を呼び
24時間で110万回を超える再生回数を叩き出した。
タイトルは以下の通り。
「生意気なお姉ちゃんたちやっつけてみた♡」
設定されたタグには"女子プロレス"や"姉妹喧嘩"など集客を意識したものの他に
#妹のが強い
#先に生まれていばってるだけw
#関節技にビビりまくりw
#カンチョーで負けました♡
など、タグの意味を成さない屈辱的な文言も並んだ。
無論、これも編集と投稿を妹たちに丸投げされた蘭子とエミリが指示を受けて入力したものである。
また、コメント欄はというと、下馬評を覆しての勝利し、強大な存在であった姉に屈辱的なセリフと共にダンスを踊らせたことで
暴君系の姉をもつ妹たちからは
試合に勇気づけられたり溜飲が下がったというコメントが続々と届き、にぎわう。
「元気もらいました!私も勇気出しておねえちゃんやっつけてみようかな?」
「うちのも暴君だから、なんかスッキリ?見てて思ったけど意外と姉って弱いのかもww」
「前の筋トレ動画参考にして鍛えはじめたよ〜、見返してやる✨待ってろ!」
「私の姉もしょっちゅう突っかかってきてほんとうざい、同じ動画撮らせてやりたいww」
「姉チームの左の人、お尻の穴見えてるのに気づいてないの!?おマヌケすぎてかわいいw」
「姉妹なんだよね?お尻の大きさ違いすぎない?wどうして?www」
「前にバズってた護身用の関節技レッスン、何回も見てる!あれ次の喧嘩で使ってやろうかなって?」
「最後のカンチョー攻撃めっちゃ笑いましたww自分のおねえちゃんもあんな風にしたら同じ声出すのかなw」
かくして、ネットをも巻き込んだ姉vs妹の代理戦争は妹たちに軍配があがった。
この展開は一大ムーブメントを起こし、それまで年上の強権を使って虐げられてきた妹たちにより、姉との喧嘩に勝って蘭子たちと同じダンスを踊らせる「逆襲チャレンジ」なる企画がしばらくの間ブームとなった。
麻里香とモカは、バズりと仕返しという大きな目的を同時に果たすことになったのであった。
【完】
