限界独身女子(26)ごはん最終巻制作の裏話

終わっちゃった…


紙面では先月が最終回でしたが、およそ2年半、ごはんと謳いつつまともにごはんを食べないおっぱいお姉さんのお話を描かせていただきました。

ニコニココメントやXのご感想などを読んでいると非常に多くの読者さまが「えっ、なんでもう終わるの?」「これから面白くなりそうなのに」という反応で最終回を惜しんでくださり、ミョコが本当にいろんな人に応援されて育ってきたのを実感しました。


前にもお伝えしましたが、当初の予定では本作は6巻程度まで連載を続けて話を畳んでいく方向でした。ところが昨年末に急遽この企画を立ち上げてくれた担当さんが転職することになり、別の編集さんに引き継がれてすぐに打ち切りの宣告をされました。私も編集部内の事情を細かく知らないので精確なことは知りませんが、伝えられたのは「シンプルに売れてないので編集長が打ち切り判断をした」ということでした。

連載当初は編集長も気に入ってくださっていると伝え聞いていたのですが、担当交代と近い頃に編集長の異動もあったらしく、よりシビアな方向に経営判断が動いたのかなという感じです。会社の判断なので私にはどうにもできませんし、それまでに売れなかったのは私の実力不足が原因です。

問題だったのは打ち切りの話が出たのが3巻発売の直前で、すでに4巻の構成も考え切った後だったことでした。一応本作は単話構成なので、どうにかこうにか最後の2話でバランスを整えようとしたのがあの形というわけです。なので見る人によってはちょっと唐突な終わり方に見えたと思います。


いつもと変わらない始まりに見えます。

が、この作品が始まった最初の頃と比べると、初めのページからすでに自分で人生と向き合おうとしているのがわかると思います。


連載作品の構成は基本的に「これまで進んできた道の結果」と「そこからまた新しく続く道」を連続的に繋いでいくものだと思っています。

最終話では特にこれをまとまりよくするために、主人公の歩みが一つの着地点にたどり着いて安定したことを明示する必要があります。

一つ前のおにぎり回で、ミョコはもう友人家族と一緒に日常過ごす環境とエネルギーを取り戻しています。そういう安定状態でなければ、こんなふうに新しい人と一緒に仕事する前の段階でゾンビ化していたであろうことはこれまでの描写の通りです。



自分から話しかけられて偉い


この白石さんのセリフも意図的に過去のミョコの言葉を反復させてます。

2話目の彼女を覚えてるでしょうか。


2話目のミョコ。

表情がほとんど同じです。

「死んでないだけ」の意味を知ってるから、どうしても他人事にできないんですね。




最終話特有のこれまでを振り返るような無声劇ムーブ


ミョコは引きこもっていた+人間運に恵まれてそういう接触もなかったわけですが、

弱っている人間を食い物にしようとする輩は腐るほどいるわけで、そういう経験をすると人間不信にもなるだろうなという描写です。

そんな人でさえ折れてしまうのは、ミョコ自身も弱い人間なのを隠そうとしないからでしょうか。


受け継がれし老師の教え

こちらも意図的に繰り返したコマ割りですが、覚えているでしょうか。


物語冒頭、最初の最初の1ページ目との比較です。

元気になったね。


ここでまた新しい道が生まれる、という期待で締める構成です。

ところでお気づきでしょうか。実はこのページで初めて白石さんがミョコと目を合わせています。

出会った頃から全く他人を信用していない彼女は、こうしてミョコに餌付けされるまで誰ともまっすぐ目を合わせていません。よかったら読み返して調べてみてください。


こんな感じで最終話は「限界ではなくなったミョコが別の限界に寄り添えるようになる」という作りにしています。本来はここで次巻へ繋げる形にしていきたかったのですが、演出や回復の温度感などで割と強引に締めくくりの流れへ持っていってます。

もともと予定していた5・6巻のプロットは確定ではなかったものの、同じようにミョコが他キャラの支えになれるくらい人間力を取り戻していく筋書きでした。

突然の打ち切り宣告で無理矢理感のある畳み方にはなってしまいましたが、基本的に読者さまへ届けるのは同じ温度感だったと思います。

最終巻に収録する描き下ろしもそれを意識して前々から考えていました。


で、その単行本描き下ろしについての裏話ですが。

実は4巻収録分の本文原稿自体は8月中旬の段階で完了しており、同月末には最終巻の構成やオマケの配分などの打ち合わせを終えて、翌月には描き下ろしの原稿も仕上がっていました。そうして単行本作業も全て終わった頃に、急に担当編集さんから収録ページ数を間違えていたとの連絡がありました。

かなりザックリとした説明ですが、印刷物というのは印刷所によってページ単位での値段設定が決まっており、それを逸脱するページ数になる場合は追加の代金が発生する仕様になっています。当然ながら商業出版社としては基本的に余計なコストがかからないよう規定のページ数に合わせて本文内容を調整するわけですが、描き下ろし漫画を収録するとページが規定通りにいかなくなってしまうわけです。

なので描き下ろしのページ数を半分に減らせないかと言われたのですが、すでに描き終わった後の漫画を削るなんて言われても当然できるものではなく、一度は掲載を丸ごと諦めることになりました。

しかしほんの数ページの描き下ろしとはいえ大切な内容だったのでどうしても諦めきれず、どうにかならないかとゴネたところ最初に言われたのが、「本誌に描き下ろしを掲載し原稿料を支払う(単行本には載せられない)」という代案でした。


ここで私の一方的な感情を伝えるのは不公平なので詳細は省きますが、せっかく最終巻まで応援してくれた読者様への特典として描いたものですから、みんなの手元の単行本に収録されないのでは意味がないと思い、代案を蹴ってさらにしつこくゴネました。たぶん人生で一番真剣にゴネたと思います。

本当にしつこくゴネました。なんでもするから載せろとゴネました。

一週間くらいはゴネ続けました。


結果的に担当編集さんも動いてくれて、「他の幕間にオマケページを載せまくって無理矢理ページ数の辻褄を合わせる」という力技で掲載許可を取ることができました。

なので最終巻は各話の間ごとにオマケコマ、巻末に描き下ろし漫画、イラストのオマケがモリモリ載ってます。4巻だけちょっぴり本が厚いです。

いろいろと唐突な幕引きになってしまったかもしれませんが、単行本を通して読めばホッとできる読後感の本にできたと思いますので、ぜひ買って読んでみてください。



次回作の企画、キャラ設定については9月半ばの段階で進行中だったのですが、ダージリンの急逝に伴って著しくスケジュールが狂ってしまったため、今年中のネーム公開等は難しくなりそうです。

現在は療養しながら冬コミ用の原稿を必死に描いているのですが、こちらもなかなか進められず……下書き段階までいけばまた支援者様向けに公開しようと思っているのですが。絵に関しては1コマ描くだけで脳がフリーズして緊急停止してしまうので、少しずつリハビリしている最中です。

先日も人前で話す機会があったのですが、猫が亡くなったという事実を口にするだけでまだ涙が溢れ出てしまう状態でした。頭も体も彼女の不在に慣れてきたと思っていたのですが、単なる事実として人に伝えられるほど過去のことにはできていないようです。まだ1ヶ月なので当たり前と言えばそうですが。


限界独身女子(26)ごはんは残念ながら打ち切りとなってしまいましたが、連載当初は「こんな憂鬱な漫画どこに需要があるんだ……」と思っていた私も、ここまでたくさんの方に深く読んでいただける作品になってくれてとても幸せです。

ミョコのおっぱい目当てで読んでくれた方もいたことでしょう。

それがノイズだと感じた方もいたことでしょう。

それも含めて私の作品の癖だと思っていてください。


たぶんこれから一生こういう漫画ばっかり描いてると思うので、またふとした時に私の名前を見かけたら読んでくださると嬉しいです。

短い間でしたが、ご愛読ありがとうございました。





















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